Your eyes Stole all my words Away

ぼくはとても幸せなんだ

星空にはいつも、笑わされちゃってさ

音楽劇「星の王子さま

 

4/28-4/29

兵庫県 あましんアルカイックホール・オクト

5/5-5/7

東京都 あうるすぽっと

5/13-5/15

愛知県 デザインホール

全15公演

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世界に一つしかない美しい薔薇を、大切にする王子さまの気持ちを、私はとてもよく理解できる。

それはきっと私が、河下楽くんという存在に寄せる感情に、似ているから。

 

 

音楽劇「星の王子さま」大千穐楽を無事終え、何が起きるかわからないこのご時世で、無事に完走できて本当によかった、という安堵の気持ちと、終わってしまったことへの大きな喪失感、両方に襲われているけれど。

 

それでもやっぱり、記念すべき初主演舞台を見届けられたことへの嬉しさが勝る。

この2年間、自分がずっと我慢してきた物を取り戻すかのように、劇場に足を運び、期待以上の物をもらって、満足感と充実感を噛み締めながら帰路に着く。

エンターテインメントはすごい。舞台はすごい。私の好きな人はすごい。

そんな当たり前の感情を噛みしめられる事に、改めて感謝したい。

 

 

星の王子さま

ほとんどの人には説明不要だとは思うが、言わずと知れた、サン=デグジュペリの名作で、200以上の国と地域の言葉に翻訳され、初版発行から70年以上経った今も世界中の人に愛されている作品だ。

私も、小学生の時にこの本に出会い、遠い宇宙の果てに、羊や一輪の薔薇の花と仲良く暮らす、優しく孤独な王子さまの存在に思いを馳せたことがある。

児童文学作品というカテゴリーに属しながら、この本が伝えるメッセージはとても重く、解釈も様々。

哲学的な要素や言葉を多く含み、受け取る人の年齢、人種、宗教によって、また違う物語になる。そんな印象を受ける物語だと私は思う。

そもそも、児童書ってカテゴリーで合ってるのかな?

現実を知り、何かを諦めてしまった大人にこそ重く響く物語だと思うから。

 

 

音楽劇「星の王子さま」の物語は、舞台上に置かれた一台のピアノと、無機質でシンプルなセットという、とても素朴で無駄のない演出で描かれる。

大きな舞台装置や、ド派手な演出は無いからこそ、舞台の出来はピアニストを含むキャスト一人一人の実力に大きく左右され、初主演の楽くんにとっては本当に大きな挑戦だったと思うし、観客側からしても、初日公演は他のどの感情よりも、緊張が勝った。

客席にいる私がそうだったのだから、本人へのプレッシャーはとてつもないものだったと思う。

それを15公演やり切った私の自慢の自担、河下楽くんは、どの公演も、舞台の上でキラキラと星の輝きを纏っているように見えた。

15公演、一つとして同じ「星の王子さま」という作品は存在せず、回を重ねるごとに王子さまと楽くん本人が融合していくような印象を受け、とにかく楽しかった。

 

 

2時間5分の上演時間、楽くんの出番の時間はおそらく2時間を超える。

それだけ出ずっぱりで、一瞬袖にはけるシーンも、すぐにまた出てくる。

セリフ量はかなり多く、原作を踏襲した、普段我々が使わないような独特の言い回しの長台詞が劇中に何度もある。

正門ソロコン、ジャニーズWESTのバック、関バリ。その他の仕事。それと並行であれだけのセリフ量を頭に入れ、音楽劇なので歌稽古もあったはず。

おまけに楽くんは現役大学生だ。

本当に頭が下がる。

本人からすれば当たり前のことなのかもしれないけれど、彼のひたむきさと努力の結晶がそこにあった。

 

一輪の薔薇の花に捧げる献身的で濁りのない愛情。

大切なものを見つけるために自分の星を飛び出すことにした王子さまの高揚感。

宇宙を旅し、様々な人に出会い、成長していく王子さまの好奇心、期待、そして失望。

キツネや飛行士との間に芽生えていく友情と愛情。

優しく切ない別れのラストシーン。

 

物語を通して、細やかに変化する王子さまの感情一つ一つを丁寧に、真っ直ぐに、演じ切った楽くんが誇らしく眩しく、本当に好きだと思った。

王子さまというキャラクターは難しい。

サン=デグジュペリが王子さまというキャラクターの投影したのは、子供の頃はみんな持っていたはずなのに、大人になるとなぜか忘れてしまう純粋さ。

 

それを見事に表現した楽くんから滲み出る、内面的な美しさが、舞台上で確かに輝きを放っていた。そんな風に思う。

 

また、今回特に実感したのは、歌唱力のレベルアップだ。

元々関西Jr内では、歌唱力が高いメンバーに名を連ねることが多い楽くんだが、私の個人的イメージでは、元々の持ち味としては、ミュージカル発声というよりは、J-POP向きの声質と歌い方だったと思う。

それが今回の「星の王子さま」では発声から何から完全にミュージカルにシフトチェンジしていて、度肝を抜かれた。

元々歌が上手い彼が、ミュージカルの発声法まで手に入れてしまった。これを無敵と言わずして何と言う?

星の王子さまを経て、レベルアップした楽くんの歌唱力が、今後のコンサートでどう披露されるのかも楽しみだ。

 

 

 

先輩や仲間、共演者。スタッフさん。

「自分は本当に支えられている。恵まれている」と楽くんは再三口にするけれど。

関わる全ての人が、愛情を捧げたいと思うのは、支えたいと思うのは。それは紛れもなく楽くん、あなたがひたむきで、まっすぐで、純粋で、努力家で。いつでも周囲の人間に感謝の気持ちを最大限に伝えているからだと思う。

 

そして、そんな楽くんを応援できることは本当に幸せなことだ。

 

千穐楽のカーテンコールで「僕は本当に未熟な主演で」と言いながら子供みたいに顔をぐしゃぐしゃにしてワンワン泣く楽くんに、彼が主演として散々ぶつかって来たプレッシャーの大きさを改めて再確認し、私も涙が止まらなかった。

乗り越えて走り切ってくれてありがとう。

素敵なものを見せてくれてありがとう。

応援させてくれてありがとう。

 

宇宙に一つしかない、代わりは決していない、大切な宝物を、私も見つけられた気持ちでいる。

 

「簡単なことだったね

大切なものはここにある

大事なものもちゃんとあった

それを知ったんだ

ぼくはとても幸せなんだ」

そう言って、自分の星に帰っていった王子さまと、また会える保証はないけれど。

 

 

キツネが王子さまと出会って、麦畑の見え方が変わったと言ったように。

飛行士が、星を眺めるのが好きになったように。

 

私も、この先何度でも、この作品を思い出し、その度に優しい気持ちにしてもらえる。

そんな確信がある。

 

 

 

王子さま、ありがとう。

河下楽くん、ありがとう。

 

 

 

 

2022年 5月20日

 

こあら